思いを
消費者に
プロジェクト

2024.08.23

畑でレストラン@ハスカップファーム山口農園×下國伸シェフ

▼ 目次

コープさっぽろの「ご近所野菜」など、スーパーで生産者さんを知ることができる売り場も増えてきました。しかし一般的には、スーパーで手に取った食材がどんな環境でどんな人に育てられたかを知ることは難しいです。生産者さんを知ることができ、食材が育つまでの苦労や喜びまで聞くことができたら、もっと食が楽しく、豊かなものになるはず。

コープさっぽろでは「畑でレストラン」というイベントがあります。このイベントでは、「コープさっぽろ農業賞」を受賞された生産者さんの畑で、生産者さんに畑を案内してもらって思いを聞き、その後に主に北海道で活躍するシェフが採れたての食材を使って、1日限りのコース料理を提供します。生産者さんやシェフの思いを消費者につなぐイベントなのです。

〈関連リンク〉
▼「コープさっぽろ農業賞」受付スタート!4年に一度の機会にぜひチャレンジを!
https://coopcycle.sapporo.coop/media/food/food_4592/

▼大自然の中でコース料理!?「畑でレストラン」ってなんですか?
https://coopcycle.sapporo.coop/media/foodeducation/foodeducation_913/

畑でレストラン初のディナー開催

2010年にスタートした畑でレストランも今年で14年目。毎年ランチでの開催でしたが、今年は初のスペシャルディナー回を開催。今回は、7月7日(日)に厚真町のハスカップファーム山口農園の畑で開催された、下國伸シェフのスペシャルディナーの回に参加してきました。

下國シェフは第1回CHEF-1グランプリの王者にもなり、ご出身である北海道の生産者さんとのつながりを大切に料理をされる、北海道各地で引っ張りだこの人気シェフ!今回の山口農園×下國伸シェフの回は募集人数40名に対して、なんと351名の応募があったそうです。

(左)下國伸シェフ、(右)山口農園代表 山口善紀さん。

「畑でレストラン」開催概要

▼開催日時
2024年7月7日(日)15:20~18:30
▼開催場所
ハスカップファーム山口農園
▼シェフ
下國伸さん
▼イベントの詳細はこちら。
https://www.sapporo.coop/event-activity/hatake-de-restrauant/20240707/

畑でレストランをレポート

畑でレストラン初参加の編集部スタッフがレポートします。

まずは山口さんによる、ファームツアーからスタート。

ファームツアー

山口農園の山口善紀代表に案内していただきながら、ハスカップ畑を見学。山口さんは厚真町でハスカップを育てるハスカップ農家さんです。

「ハスカップは漢方にもよく使われるスイカズラ科の植物の仲間で、不老長寿の実とも言われているんです」という山口さんの元気な声にハスカップのパワーを感じながら、山口農園のこれまでの歩みやハスカップの特徴を教えていただきました。

ファームツアーをしながらハスカップ狩りもさせていただくことに。同じハスカップの木でも熟し方が違うため、食べごろのハスカップの実の選び方を聞いて、みなさん真剣においしいハスカップを選びます。

ハスカップ狩りに夢中。

山口農園さんで品種登録された、生でもおいしいハスカップ

元々野生のハスカップの木は1,000本あれば、1,000本とも種類が異なり、味も違うため品種登録されていないものがほとんどなのです。甘い実をつける木もあれば、渋い実をつける木もあり、一般的には生で食べておいしいハスカップを見分けることは難しいとのこと。

北海道でハスカップを栽培している生産者さんのほとんどが、品種登録されていないハスカップを育て、その中で少しでもおいしく生産性のよいハスカップを選びながら栽培しているそう。

山口農園さんでは、山口農園さんや山口さんの実家で栽培されていたハスカップ5,000本から長年にわたり選抜し、山口さんがハスカップ農家を継ぐまでに30種類まで選抜。さらに、精鋭を20種類に絞り、その中から生で食べられるおいしいハスカップを2種類選び、品種登録されました。現在は、登録した2品種の他に選抜した18種類を栽培しています。

山口農園のハスカップは生で食べてもおいしいということが徐々に広がり、山口さんが登録した品種を育てる厚真町のハスカップ農家さんは、現在103軒まで増えたのだそう。今では、品種登録された「あつまみらい」と「ゆうしげ」の2品種が、唯一生で食べておいしいハスカップとして流通し、厚真町が誇るハスカップブランドとなっています。

あつまみらい

ゆうしげ

よく見ると下の方に毛が生えているのがあつまみらいだと教えていただきました!

採れたてでみずみずしいハスカップを食べて、思わず笑顔に。

皮が薄く、生での流通が難しいハスカップ。この日も生のハスカップを初めて食べたという方がほとんどでしたよ。

料理の主役にもなるハスカップのフルコース

いよいよディナーの時間。ファームツアーに参加してハスカップの魅力に浸った参加者のみなさんは、ディナーの時間をより楽しみに感じているようでした。

当日のメニュー。

コースは全部で7品。なんと、前菜からデザートまでの7品全てに山口農園さんのハスカップを使った、ぜいたくハスカップづくしディナー!

普段は畑の中で行われますが、この日はあいにくの雨だったので、納屋での開催。それもまた隠れ家のような雰囲気でワクワク。

1品目:ふるふるししゃもフライとハスカップタルタル

厚真産のししゃものフライに鰊(にしん)の切りこみとハスカップのタルタルソースを混ぜ合わせていただく一品。密閉容器に入った状態で運ばれてきて、ソースとフライが絡み合うように、振ってからいただきました。参加者のみなさんとフリフリ。コースが始まり少し緊張感のあったディナー会場が、一気に和やかな雰囲気に。

2品目:チャバタとドライハスカップバター

ハスカップをドライにしてバターに練り込んだものを、イタリアのお食事パン、チャバタにつけていただきます。一般的なチャバタよりも高加水でしっとりふわふわに焼き上げられていて、ハスカップバターがジューシーに広がる一品でした。

3品目:ハスカップガスパチョと甘えび

雨上がりの蒸した天気にぴったりの爽やかなガスパチョ。一般的にはトマトで作るガスパチョをハスカップで作り、さらに海老の出汁や海老オイルが入っています。トマトのガスパチョよりも濃厚な味わいに感じました。

4品目:ハスカップオイルとグリーンサラダ

小ぶりのフリルレタスは、厚真町の有機農園ekam(エーカム)さんのもの。ハスカップジャムを塗ってローストし、サラダの下には海苔のソースが合わせられています。海苔とハスカップの相性が抜群でした。

5品目:ひらめとハスカップジェノベーゼバターソース

焼いたひらめにハスカップを入れて作ったジェノベーゼバターソースを合わせた一品。「淡泊な魚にハスカップジェノベーゼソースを合わせると、ひらめよりもハスカップソースがメインに感じる一品になりました」と下國シェフ。このソースがあれば何皿でも食べられそう!

6品目:初夏鹿のローストとハスカップクラリフェとハスカップジン

メインの夏鹿とハスカップジンをつかった一品。軟らかく火入れされた鹿肉に華やかな香りのハスカップジンと澄ましバターがしっとりと合わさり、口の中でうまみがじゅわーっと広がりました。

7品目:キャラメルチョコレートとハスカップクランブル

デザートはキャラメルチョコムースに生のハスカップを切ってそのまま乗せた一品。「重く感じるデザートでも、ハスカップのほどよい酸味が口の中を爽やかにしてくれます。」と下國シェフがおっしゃる通り、生のハスカップがのるだけで口の中を爽やかにリセットしてくれました。

7品全てに、同じハスカップを使っていても異なる味わいに感じ、ハスカップという食材の味わい深さと、それを表現する調理法に感動するディナーでした。今回のコースは海産物と合わせた料理が多かったのですが、その理由について下國シェフは「厚真町は海がある街なので、厚真町で育つ作物は海のものと合うと思い、実際に合わせてみると相性がとても良かったです」とおっしゃっていました。

参加された方に畑でレストランの感想を聞いてみました

今回、約8倍の倍率の中当選された、参加者の方にお話を聞いてみました。

非日常な空間で味わう特別な味わいにワクワク!

「ハスカップは酸っぱいイメージがあったので、ジャムにするなど加工しないと食べられないものだと思ってました。生のまま食べても皮が薄くて口に残らないし、実がおいしくて、種もない。お料理にするとさらにおいしいなんて初めて知りました!」

ハスカップジャムを塗ったフリルレタスを炙る。

「以前畑でレストランに参加して、とても貴重な体験ができたのでまた応募しました。ちょうど今日が結婚29年目で、とても素敵なお祝いになり嬉しいです。下國シェフのお料理をいただけるのを楽しみに来て、特にレタスとハスカップと海苔など新しい合わせ方にワクワクしながらいただきました。」

調理することで、生でいただくよりもさまざまな味を感じさせてくれるハスカップ料理の魅力に、驚きの声が続出。「お土産にいただいたハスカップはどんなふうに食べようか」と、ワクワクする参加者のみなさんの笑顔であふれていましたよ。

ハスカップファーム山口農園の山口善紀さんにお話を聞きました

ハスカップファーム山口農園代表 山口善紀(やまぐち・よしのり)さん

―――今日1日、どんな日でしたか?

実は、畑に来てもらうのが 1 番嬉しいんです。ハスカップ狩りに来てくれたお客さんが次の年、友⼈を連れてハスカップ狩りに来てくれることがよくあります。その時に、うちのハスカップを⾃分の農園のように友⼈に紹介してくれるんです。その姿をみると本当に嬉しくなりますね。畑でレストランは畑に来てもらえるだけでなく、うちのハスカップを使った料理まで食べていただける。この企画にとても魅力を感じています。

―――下國シェフのお料理はいかがでしたか?

本当に感動しました。生産者はなかなか消費者の喜ぶ顔が見られないのですが、おいしいハスカップ料理をいただき感動するみなさんを見ることができた、素晴らしい1日です。僕自身下國シェフの料理をいただくのは初めてなので、今日をとても楽しみにしていました。ハスカップという食材の可能性を改めて感じることができ、感謝しています。

下國伸シェフにもお話を聞きました

下國伸(しもくに・のぶ)さん

―――畑でレストランの魅力はどのようなところにありますか?

畑の中で開催する魅力は何より、生産者さんが喜んでくれることですね。料理人として、おいしく育てられた食材の代弁者になって、よりおいしく食べてもらいたいという気持ちがあります。実際の畑の中で生産者さんが食材を紹介してくれた後に料理が提供できるというのはとても貴重です。

――――畑でレストランでお料理された感想をお聞かせいただきたいです。

畑でレストランでは畑の中で料理をするので、店とは違うことをどうやって提案できるか考えますが、今回は上品さよりも童心に返ったような料理にしたいなと思い作りました。今日みたいに雨が降ると、カリカリに焼きあげたい食材がカリカリにならないなど、もちろん天候に左右される部分はあります。でも天候に左右されるのは生産者さんも同じです。育てられた畑で開催することは、一番食材の素晴らしさを感じてもらえると思っています。

―――山口さんのハスカップはいかがでしたか?

山口さんのハスカップのように、ここまで料理の主役になれるベリーは珍しいです。味わいに複雑みがあるからこそできる表現があって、だからこそ7品全てに使っても、全く違う味わいに感じさせてくれました。

作り手と消費者が笑顔と感動でつながる日

畑でレストランは、作り手の思いが消費者に伝わり、笑顔になるイベントでした!ファームツアーやコース料理を通して、生産者さんが育てる食材への思いや調理法による食材の可能性を知ることができ、たくさんの感動が生まれます。ハスカップ狩りは、おいしい状態を見極めて一つひとつ収穫する大変さを感じ、食材への感謝の気持ちが湧く体験に。

こうして作り手と消費者がつながり、良い消費が生まれることで、もっと豊かな北海道の食の循環になると感じた一日。この日参加されたみなさんが、山口農園のハスカップのファンになり、家族や知人を誘い、またハスカップ狩りに来る光景が目に浮かぶ、素晴らしいイベントでした。

〈関連リンク〉
▼畑でレストラン2024公式ページ
https://www.sapporo.coop/event-activity/hatake-de-restrauant/index.html

▼カイモノのセンタク〜vol.1 「ご近所やさい」編〜生産者の顔が見える新鮮野菜!
https://coopcycle.sapporo.coop/media/food/food_3256/

▼「コープさっぽろ農業賞交流会」レポート。生産者さんの情熱に思わず感動!
https://coopcycle.sapporo.coop/media/food/food_1453/

北海道で生きることを、誇りと喜びに

コープさっぽろの取り組みは、組合員さんのご利用や参加によって「北海道の暮らしを豊かにすること」につながっています。取り組みは組合員さんならどなたでも参加でき、日常を通して気軽に参加できるものもあります。コープサイクルでたくさんご紹介していきますので、ぜひその他の記事もご覧ください。

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