▼ 目次

これまでコープサイクルでは、学生の方をはじめ、企業や自治体で働く方々など、多くの方に取材を行ってきました。その中で感じるのは、「地元にために何かしたい」という思いや、「地方に移住して働きたい」という方が増えているということ。
「Uターン」や「Iターン」という言葉も当たり前になってきて、働き方も多種多様となり、以前よりも自分らしい働き方を選択できるようになりましたよね。

そんな中この夏東京にて、地方企業の魅力と可能性を知ることができる大学生・大学院生向けのイベント「LOCAL CAREER FORUM 2024」が開催されました。イベントにはコープさっぽろの大見理事長も登壇しましたよ!

「LOCAL CAREER FORUM 2024」が開催

「LOCAL CAREER FORUM 2024」開催概要
▼日時
2024年8月20日(火)13:00〜20:30
▼場所
POTLUCK YAESU(東京ミッドタウン八重洲)
▼参加対象者
大学生・大学院生

<関連リンク>
▼公式ページ
https://localcareerforum.chiiki-zukan.com

コンセプトは「世界で戦うヒントは地方にある」。全国から多くの地方企業経営者が集結し、大学生・大学院生にむけて地方企業の魅力と可能性を伝えるイベントです。

イベントの対象者は大学生と大学院生で、すでに内定を取り終わった学生も参加が可能。「内定者に地方の魅力を伝えても、意味がないのでは?」と思う方もいるかもしれませんですが、このイベントは内定者の方々に新しい選択肢を見つけて欲しいという目的もあるのだそう。

地方に憧れがあったり、働いてみたいと思ったりしていても、地方にはどんな企業があってどんな思いを抱いているのか、どんな魅力があるのかなどは、なかなかわからないもの。でも、このイベントを通して先進的な地方企業の経営者と出会い、地方にはチャレンジして活躍できるフィールドがあることを知ることができれば、キャリアの選択肢はきっと広がるはず!

イベントではさまざまな地方経営者などによるトークセッションやディスカッション、プレゼンなどが行われました。コープさっぽろもこのイベントの趣旨に賛同してイベントを共催。大見理事長も札幌から東京へ駆けつけました!今回コープサイクルでは、クロージングセッション「民が官を支える時代」をクローズアップ!「地方」というキーワードに注目して、トークセッションの様子をご紹介していきます。

ローカルテーマこそスタートアップ!?地方で働く魅力とは?

クロージングセッション「民が官を支える時代」では、コープさっぽろの理事長・大見英明さんと、株式会社XLOCALの代表取締役・坂本大典さん、株式会社SHONAIの代表取締役・山中大介さんが登壇。

コープさっぽろ 理事長 大見英明さん

株式会社XLOCAL 代表取締役 坂本大典さん/地方企業が都市部の複業プロ人材を採用する地方特化型のダイレクトスカウトサービス「チイキズカン(地方×複業×年収1000万相当)」を運営など、地方特化型の総合HRサービスを提供。このイベントを主催。

株式会社SHONAI 代表取締役 山中大介さん/山形県庄内地方を拠点に、全国地方都市の課題解決型事業に取り組む。地域と全国から資本調達し、ホテル「スイデンテラス」や教育施設「キッズドームソライ」など、観光・農業・人材・教育の4領域で地方を前進する。

どうして株式会社SHONAIとコープさっぽろが包括連携協定を結んだの?

コープさっぽろと株式会社SHONAIは、事業を通じて地域課題解決に取り組んでいくことを目的に「地域づくり包括連携協定」を締結しています。

大見さん

コープさっぽろは小売業が中心だと思っている人も多いのですが、実は物流などさまざまな事業を行っています。それらの事業を通して、北海道に暮らす方々のいろいろな生活の困りごとや、北海道の危機的な状況に対して、問題解決型の組織になっていくことを目指しているのですが、北海道をどうしたらもっと元気にできるだろうと思っていた時に、山中くんに出会ったんです。
ホテルをつくり、農に勤しみ、学童保育を行う…。SHONAIの事業はコープさっぽろにはない分野だったので、「これは業務提携するべきだ!」と意気統合して、2023年10月に包括連携協定を結ぶことになりました。

山中さん

僕が地方で一番ハンパじゃない組織だと思っているのが、コープさっぽろなんです。コープさっぽろは生活協同組合ですが、生協ってみんなが自分たちが受けるサービスに対して出資をして、自分たちが経営にも参画するという仕組みですけど、北海道民の約8割がコープさっぽろの組合員なんですよ。これ、あり得ないですよね!

コープさっぽろの合言葉は「つなぐ」。組合員活動福祉活動など「人と人をつなぐ事業」や、移動販売食育など「人と食をつなぐ事業」、子育て活動環境活動など「人と未来をつなぐ事業」と、北海道で暮らす組合員さんの暮らしをより良くするために、社会貢献活動を通して組合員さんに供給と還元を行っています。

これまでコープサイクルでは、コープさっぽろのさまざまな社会貢献活動をご紹介してきましたが、どの活動も、北海道やそこに住む人々が抱える課題や悩みを解決するために生まれたものでした。「北海道民の約8割(2,017,607名 ※2024年3月20日時点)がコープさっぽろの組合員さん」であることは、コープさっぽろの北海道民の暮らしをより良くしたいという思いが、組合員さんにも伝わっているからなんですね!

地方で働く魅力ってなに?

大見さん

生活の質という概念がありますが、東京に住んでいるから生活の質が高いということではないと思うんです。私は札幌に住んでいますけど、大自然の中にあって、30分で海水浴もスキーも行ける。そして、食材は豊かで、東京よりもはるかに安い。だから、子どもを育てるなら絶対に北海道がいいなと。地方の魅力や価値を知っているということは大事だし、生きていく上で何が重要かを考える時期にきていると思いますね。

山中さん

僕は本能や感性に蓋をしないことが大切だと思っています。「積丹の海がきれい」だとか「庄内の夕日がきれい」とか、美しいものや本物って、必ず人のニーズがあってお金になるんですよ。地方は人の本能にダイレクトなものがいっぱいあるから、地方では経済を作れると思っています。

大見さん

東京にいて情報過多になると、自分がどうしたらいいか分からなくなってしまう。でも、地方に行ってその地方の中でどう生き抜いていくかを考えると、戦略的な方向性が見えてくる。これは、地方に考える余白があるからなんですね。
日本は非常に豊かな場所だと思います。今、日本の貨幣価値はどんどん下がっちゃって大変ですけど、それでも多くの日本人は、海外に行ってもやっぱり日本に戻りたいって言いますもんね。変な国ですよね、日本は(笑)。

坂本さん

僕は今、日本中周っているんですけど、地方にはめちゃくちゃ素晴らしい魅力がいっぱいあります。それを一番知っているのは誰かって言うと、地元の経営者なんですよ。一歩踏み出して地方に足を運んでみると、多分世界観は変わるし、大見さんと山中さんの言ったことが「そういうことなんだ!」と気づけると思います。

北海道に長く住んでいても、行ったことがない町もあると思います。まずは行ったことがない町に足を運んで、その町の魅力や本物に触れてみるのもいいかもしれません。
コープさっぽろでは自然に囲まれながら本格コース料理を味わうというイベント「畑でレストラン」や、海岸清掃を通して海の現状を知る「海のクリーンアップ大作戦!」など、さまざまなイベントも開催しています。なかなか自分で地方に行くのが難しいという時は、イベントに参加して地方に行ってみるのもおすすめですよ!

地方で組織が成長していくために必要なこと

坂本さん

大見さんと山中さんは、地方に革命を起こそうとしていますよね。そして、行政ができなくなっている領域まで民間のビジネスを通じて課題を解決していこうと取り組んでいる。地方の中で2人のようにチャレンジングでどんどん攻めた取り組みをやる人たちって、まだまだ多くないですよね。

山中さん

地方にいると、コンプレックスを抱えている人や、いつか誰かがやってくれるという他人依存の根性を持っていたりする人が多いと感じることがあります。でも、それはすごくもったいないと思っていて。地方はものすごく可能性があるので、その思考をもっと前向きに変えるだけで、どんどん良くなると思うんです。
ただ、地方にはコミュニティの良さがある一方で、難しさもあって。僕は東京から移住して10年間は人口20世帯の村に住んでいたんですが、村中から宇宙人って呼ばれていました。

面白いのが、庄内に近づくほどSHONAIのアンチが多くて、離れるほどファンが多い。人間って、近くにいると「あいつむかつく」ってなるけど、遠くのほうでやっている人は「あいつすごい」みたいになりますよね。
足元の狭いコミュニティの中に閉じこもってしまうと、そのコミュニティによる価値観に縛られて後ろ向きになったり、足の引っ張り合いに巻き込まれたりする。だから、もっと俯瞰して物事を見て、前向きになることが、地方でイノベーションを生み出すためには必要だと思います。

大見さん

私は愛知県出身なんですが、北海道に初めて行った時に、こんなに自然が豊かな場所があったのかと驚きました。積丹の海に行ったら、18m下にいるウニが見えるくらい海がきれいで。
でも、北海道で暮らしている人たちは、みんなこれが当たり前だと思っている。でも、北海道外の人が入ってくると、その違いがわかるんです。IターンやUターンで外部を経験してもう1度自分のふるさとを見ると、見え方は全然違うと思いますよ。そこで生まれる気づきが、地域を変えるヒントになると思います。

山中さん

コープさっぽろって1回破産しかけているんですよね。その時に大見さんが420億円の債務保証を個人で負って、お金を立て替えていて。自分のリスクと引き換えに、もう一度組合員さんに出資をお願いして、借金を返済したんですよ。コープさっぽろはベンチャーのようなチャレンジングな精神を持っているなって感じています。

坂本さん

大見さんは、コープさっぽろを立て直すことができたのは、どのような経験が活きていると思いますか?

大見さん

私がコープさっぽろに入協した1980年代に、北海道で一番大きな小売業がコープさっぽろだったんです。当時は「新聞代の値上げ反対」とか「灯油の値上げ反対」とかいろんな消費者運動を北海道では精力的にやっていて。組合員さんとの関係性のような、いわゆる見えざる経営資産(インタンジブルアセット)の価値が一般の組織とは違うと感じました。

その後、阪神・淡路大震災の被災地支援で神戸へ行った時に、生協の従業員ががれきの中から商品を引っ張り出して100円や200円で販売していたんです。さらに、その時に全国から約3万人がボランティアで神戸に支援に行っていて、全国から生協の車両が1,500台ほど集まっていました。この様子を見た時に、生協のスケール感って次元が違うなと。

この頃、実はコープさっぽろは破綻しそうな状況だったのですが、これは北海道のためにも辞めるわけにはいかないと思い、コープさっぽろを立て直そうと頑張ることにしたんです。

山中さん

大見さんは「やっちまう」っていうマインドがありますよね。それは僕にも共通することなんですけど、地方に限らず、ほとんどの人は新しいチャレンジをする時は、100%の確信があって、100%準備が整ったらスタートしように思っているんですけど、永遠に100%ってこないんですよ。

でも、新しいことを始める時にその分野に興味があって、それを想像できる人っていうのは、3%くらいしかいない。そうなると、みんなの同意を得てからやるっていうとなると、それは取れるわけがないんです。だから僕は、3%ぐらいの同意があったら「やっちまう」っていうことを大事にしたいと思っています。

生協は稼ぐことを目的にしちゃいけないっていう風潮があって、だから生協ってどこも衰退してしまう。でも、コープさっぽろは生協なのにめちゃめちゃ稼ぐんですよ。そしてそのお金を、さらにサービスの向上につなげていく。そこが大見さんの強いところなんですよね。

気づきを得るためには、自分の行動範囲から一歩踏み出して、大局的に見てみることが大切なのかもしれません。コープサイクル編集部の私も東京から北海道に戻ってきたUターン組なのですが、これまで当たり前だと思っていた美しい景色や豊かな食材がそうではなかったということ、こんなにも魅力のある場所なのだということを、北海道を離れて初めて気がつきました。

東京に行くとか、海外に行くとかは必ずしも必要ではないと思うのです。まずは自分のいる場所を俯瞰して見てみると、これまで気がつかなかったものが、きっと見えてきます。私たちが北海道で生きることを誇りと喜びにするために、何ができるのかを一人ひとりがもう一度考えてみる時期なのかもしれません。

おわりに

地方の魅力は、その地域にいるとなかなか見えてこないものです。でも、今回のトークセッションを通して感じたのは、地方には大きな可能性があり、その魅力にどう気がつき、チャレンジをしていくことが大切だということ。
トークセッションの最後で大見さんが話していた「人生は1回だけなので、自分が思ったことをやったらいいですよ」という言葉がとても印象的でした。自分が何をやりたいかを一度考えてみてはいかがでしょうか。今いる場所で見つけられなかったら、新しい場所で自分が納得できることを見つけるという方法もありますよ。

今回ご紹介した、「LOCAL CAREER FORUM 2024」のクロージングセッション「民が官を支える時代」は、こちらのYouTubeで全編をご覧いただけます!ぜひチェックしてみてくださいね。

〈関連リンク〉
▼コープさっぽろとは
https://www.sapporo.coop/about/
▼コープさっぽろ採用情報
https://recruit.sapporo.coop

北海道で生きることを誇りと喜びに

コープさっぽろの取り組みは、組合員さんのご利用や参加によって「北海道の暮らしを豊かにすること」につながっています。取り組みは組合員さんならどなたでも参加でき、日常を通して気軽に参加できるものもあります。コープサイクルでたくさんご紹介していきますので、ぜひその他の記事もご覧ください。

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