「教育格差」を知っていますか?
教育格差とは「生まれ育った環境により受けることのできる教育に格差が生まれる」ことを言います。生まれ育った環境とは、家庭の経済状況や出身地域を指し、これらは子ども本人が選び取ったわけではない特性です。持続可能な開発目標として採択されたSDGsの中には、「質の高い教育をみんなに」という目標が定められています。これは、だれもが平等に質の高い教育を受けられること、そして、子どもも大人もいつでも学べる環境をつくることを表しています。
日本では、小学校から中学校の9年間が義務教育で、すべての子どもたちが教育を受ける権利を持っています。しかし、世界には学校に通えない子どもたちが約1.3億人もいます。*1 小学校に入学する歳になっても学校に通っていない子どもたちの約半分は、紛争や戦争、災害の影響を受けている場所に暮らしています。
教育を受けることは、子どもたちにとっては未来への希望をつなぐこと。特に、貧しい暮らしをしている子どもにとっては、教育を受けることがその貧しさから抜け出し、安定した収入のある仕事につくチャンスにつながります。こうした問題は開発途上国だけの話であり、日本には関係ないと思う人もいるかもしれません。しかし、教育格差は私たちにとっても身近な問題なのです。
*1「UIS Fact Sheet No.56 (UIS)」より https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000370721?posInSet=11&queryId=d1d425b0-3319-466d-8ab4-9012242321b6
北海道にもある「教育格差」とは?
大学などへの進学には、授業料や教材代など様々な費用が必要となります。家庭の経済状況により格差が顕著に現れるのが、こうした高等教育への進学率です。全世帯の大学進学率が73.2%なのに対して、生活保護世帯の進学率は半分程度の33%まで減少します。国立大学の卒業までには、およそ250万円、私立大学はおよそ500万円が必要となると言われています。日本には奨学金制度がありますが、学校卒業後に支払いが大きな負担となることも問題となっています。
また、家庭の経済状況に影響を与える「父親の学歴」を基準にすると、2015年時点の20代男性で「父親が大卒」層の80%が大卒に。同じ20代男性で父親が大卒に満たない学歴で本人が大卒となったのは35%でした。*2 このように、父親が大卒かどうかといった分類だけでも、すべての世代·性別で差があることが確認されてきました。本人が変えることのできない「生まれ」によって人生の可能性が制限されている教育格差は、日本で育ったすべての人にとってひと事ではないのです。
また、生まれ育った地域についての影響も見てみましょう。私たちの住む北海道では、多くの市町村で人口減少に歯止めがかからず、地域の活力低下が続く「過疎地域」と認められています。こうした過疎化や少子化が進んでいくと、一校当たりの児童生徒数が減少し、学校の小規模化や統廃合なども増加していくことになります。町村内に小学校1校·中学校1校のみといった自治体も増えていますし、このような小規模校においては、その特性を活かした学習指導や学校経営の方法を開発していかなければなりません。ですが、そのような指導ができる教師の確保も、問題の一つとなっています。
住んでいるまちに学校が少ないということは、進学する学校や学びの選択肢が、満足に選べないということにもなります。希望する進路を選ぶために、時間をかけて隣町まで通学したり、親元を離れ都市部まで出て進学することなども、今後はさらに増えていくでしょう。
*2、参考:新型コロナが突きつけた「教育格差」(前編)https://www3.nhk.or.jp/news/special/education/articles/article_19.html
先進的なフィンランドの教育を見てみましょう。
一方、先進的な取り組みをしている、海外の事例もご紹介します。
フィンランドは北欧の国ですが、その教育が注目されるきっかけとなったのは、ヨーロッパやアメリカをはじめとした先進国34ヵ国で構成されている経済協力開発機構(OECD)が行った「学習到達度に関する国際調査(PISA)」で、フィンランドが「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」分野において、2000年頃から続けて上位の結果を収めたことにあります。フィンランドはどの分野においても安定した好成績を出しており、そこから他国よりも突出して教育レベルが高いとの認識が広がりました。
フィンランドは、なぜこのような成績を収めることができたのでしょうか? 要因として考えられる特徴をご紹介します。
①授業料が無料
プレスクール(就学前教育学校)から大学院までの教育費が全額無料となっています。日本でも義務教育は授業料が無料とされていますが、フィンランドでは教材費用や給食費、通学の交通費なども全てが無償になっています。
②教員の質が高い
フィンランドで教員になるには修士号取得が必要であり、小学校以上の教員になる為には大学院修了が必須の条件となっています。また、教員の待遇や社会的地位が保障されることから競争率が高く、学校側は教員に適した人材の確保が可能になっています。
③個を尊重する学び
フィンランドでは、全国統一テストなどの実施がありません(義務教育の期間中)。他人と比較するのではなく、ひとりひとりの「個性」や「違い」を大切にしながら伸ばしていくことに力を入れています。
こうした取り組みの背景にあるのは、「子供の平等」を大切な権利として捉える考え方です。性別、年齢、宗教、思想、障がいなど、いかなる理由でも異なる扱いを受けてはならないという考えが国全体に行き渡り、教育の無償と平等が徹底されているのです。「教育の中心は子供である」というシンプルな理念のもと、大人の手によって子供の権利を重視した教育が施され、高水準な教育が実現しているのです。
コープさっぽろが行う取り組みをご紹介。
子どもたちの教育機会の平等のために、私たちにはなにができるでしょう?コープさっぽろでは、このような社会状況を踏まえて、さまざまな取り組みを行っています。
コープ育英奨学金
公益財団法人コープさっぽろ社会福祉基金は1989年に発足し、30年以上にわたって心身障がい児やひとり親家庭の高校生に対する育英奨学金事業を行ってきました。「家計状況の悪化」「学費の高騰」「大学進学率の上昇」といった理由を背景に、奨学金を借りる学生は年々増えていて、現在では大学生の2人に1人がなんらかの奨学金を利用していると言われています。経済的事情で進学を断念する子どもたちが一人でも多く進学できるように、コープさっぽろは給付型の奨学金制度を設けています。
スクールランチ事業
北海道の財政難や過疎化が進む地域では、まちの中で給食事業が成り立たなくなってしまうという問題も起きています。人口減少によって税収が減ると、自治体は従来の生活に関わる事業を縮小せざるを得ません。このような状況を解消するため、コープさっぽろでは道内に100以上ある店舗と、食品の配送を行う物流網を活かし、学校へ昼食をお届けする「スクールランチ事業」を行っています。2019年9月の様似町から始まり、2022年4月からは初山別村でも事業を開始しました。
北海道の財政難や過疎化が進む地域では、まちの中で給食事業が成り立たなくなってしまうという問題も起きています。人口減少によって税収が減ると、自治体は従来の生活に関わる事業を縮小せざるを得ません。このような状況を解消するため、コープさっぽろでは道内に100以上ある店舗と、食品の配送を行う物流網を活かし、学校へ昼食をお届けする「スクールランチ事業」を行っています。2019年9月の様似町から始まり、2022年4月からは初山別村でも事業を開始しました。
よむ・かくうれしい!支援プロジェクト
世界中の子どもたちの生命と健やかな成長 を守るために活動している国連機関、ユニセフと連携し、海外の子どもたちに対しての支援も行っています。インドネシア·パプア地域では子ども10人のうち、5人が読み書きができないという状況がありました。その背景には、子どもたちが学校に来ても、先生の指導能力や学習教材が不足していることで、十分な学習が行われていないことがありました。こうした状況を受け、地域の教員への研修や学習教材の支援を通じて、子どもたちの識字率の向上と地域の教育啓発を推進するプロジェクトをはじめました。2019年の4月から募金の受付を開始し、活動は2023年5月まで続く予定となっています。
これからを生きる子どもたちのために。
ここまで、日本や世界における「教育格差」の現状をお伝えしてきました。このような状況は人ごとではなく身近なものであり、今後もさらに広がっていくことが予想されています。また、先進的な取り組みを行う地域や学校もありますが、単独でできることには限界があります。これからの未来を生きる子どもたちにとって、私たちにはどんな行動が必要なのでしょう?
子どもたちが教育や学ぶ環境を平等に享受できるよう、コープさっぽろでは様々な取り組みを行うとともに、寄付やサポーター制度(公益財団法人コープさっぽろ社会福祉基金)を設けています。しかし、そこまで積極的な支援ではなくても、コープさっぽろのお店をご利用いただくことでも、こうした取り組みの応援にはつながっていきます。未来につながるアクションとして、まず「知る」ことも大きな一歩。私たちコープさっぽろはこれからも、地域のための取り組みと、情報発信を続けていきたいと考えています。
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