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本格的に雪が積もり、すっかり冬の装いとなった北海道。寒いし歩きづらいしで、買い物などに出かけるのもだんだんとおっくうになってきますよね。むしろコンビニやスーパーが家の前まで来てくれたらいいのに…と妄想したことはありませんか?(もしかして私だけ…?)
実は、そんな夢のような存在が実在するのです!その名もおまかせ便カケル(以下カケル)。コープさっぽろが行う移動販売の名前です。カケルがどんなものなのか、まずはこちらをご覧ください。

かわいいキャラクターと元気なアナウンス。静かな町の中では、とっても目立ちます。この賑やかなトラックを見つけると、続々と集まってくる組合員さんたち。人波が途切れたら、また次の地点へと移動して販売を開始していきます。
場所によっては自宅の目の前までやってくるらしいので、これは便利!うちにも来てほしい!!でもなんでコープさっぽろは、こんな取り組みを行っているのでしょう?気になってしかたない私たちは、カケルの一日に密着することにしました!

おまかせ便カケルとは

そもそもおまかせ便カケルとはどういったものなのか?コープさっぽろではこのように紹介しています。

北海道の買い物が困難な方をサポートするため、2010年に「おまかせ便」の名称で移動販売事業を立ち上げました。地方を中心に、食料品などの生活必需品をお届けする「移動スーパー」として、過疎化や高齢化で買い物が困難な方のくらしを支えています(2022年12月27日時点で95台が稼働中)。拠点となるコープさっぽろのお店から商品を積み、鮮魚・精肉から野菜・果物・惣菜・食品・ 飲料や日用品まで、約1,000品目の商品を品揃えしています。

45万人の買い物困難者

そうか、カケルは「買い物が困難な方をサポートするため」にできたものなんですね。でもそれって、北海道にどれくらいいるのだろう?と気になったので、そちらも調べてみました!

調べてみると、なんと北海道内には約45万人の「買い物困難者」がいるそう。(ここでは「①家から近くの店舗までが500m以上ある ②自動車の運転が困難 ③65歳以上の高齢者」に全て当てはまる方を買い物困難者としています。)
北海道の人口がだいたい520万人なので、1割近くの方たちが買い物に不便を抱えているということになるんですね。しかも2005年からの推計を見ると、その数はどんどん増加中。スーパーが無くなってしまうことなども考慮すれば、先行きは不安です…。

都市部では少し歩くとコンビニやスーパーが見つかると思いますが、地方でそれは当たりまえではありません。通販や配送サービスも発達してきていますが、インターネットなどを自由に使えない方もいますし、高齢の方が重い荷物を持って数百メートルも歩くのは大変なことです。
こうした方たちには支援が必要、ということでカケルは毎日走っているのですね!

※参考:北海道経済連合会「買い物困難者への取り組みにおける 道内の現状と今後の在り方」
http://www.dokeiren.gr.jp/assets/files/pdf/teigen/20211129_kaimono1.pdf

むかわ町での移動販売

そんなカケルの1日に、私たちも密着することにしました。
やってきたのは「ししゃもの町」として有名なむかわ町(穂別富内・穂別)です。むかわ町では現在、水曜と土曜の週2回運行。朝に「コープさっぽろパセオむかわ店」で荷物を積み込み、1時間ほどかけてみなさまの元へと向かっていきます。このむかわ町穂別でも2022年1月に農協系のスーパーが閉店したことで、買い物に不便を抱える人が増えているという状況でした。

コープさっぽろパセオむかわ店から、穂別富内へのルート

コープさっぽろの店舗を出て、販売は午前11:30からスタート。その後10分刻みで場所を変えながら、組合員さんの元をまわっていきます。

目的地に近づくと、流れる音楽とアナウンス。それを合図に近所の人たちがぞろぞろと集まってきます。ほとんどの人が顔なじみなので、組合員さん同士も「元気だった?」「今日は何買ったの?」と会話も弾む弾む。
ドライバーは車両ごとに担当が決まっているので、水曜も土曜もこのむかわ町にやってくるのは同じ方。だからか組合員さんとも関係性ができていてフレンドリーにやり取りしています。まるでご家族と話しているような雰囲気でした。

ドライバーさんも皆さんの顔と名前を覚えているので、一人ひとりにあいさつしながら、その方の取り置き商品などを手際よくお渡ししていきます。もし常連の組合員さんが顔を見せないとなったら、見守りも兼ねてご自宅のインターホンを鳴らしてお声がけすることもあるそう。単純に「気づかなかった!」という組合員さんも多いようなので、ありがたいですよね。

こうした皆さんとの関係性は、商品提供の部分でも生かされていました。カケルのトラックにはたくさんの商品が載せられていますが、これは売上データだけでなく、組合員さんの好みなども聞き取りした上でドライバーさんが選んでいるもの。なので配送エリアや車両によって、商品ラインナップも微妙に違っているのです。

そのほか、季節の旬に合わせて生鮮品の品揃えを変えたり、取材当日は大安吉日だったので縁起のいいおもちをおすすめしたり。店舗に行くのと同じように、選ぶ楽しさや新しいものに出会う喜びが感じられる工夫がたっぷり!むしろマンツーマンで接客してくれるので、店舗より便利に買い物ができてしまいそうです。

カケルにATMが付いた!

このカケルですが、実は最近さらに便利になったのです!

苫小牧信用金庫 事務集中部
移動店舗ATM担当 調査役
馬場豊さん


コープさっぽろさんとの業務提携により、平取町・むかわ町・厚真町・日高町・安平町で運行するカケルに、私たちのATMを搭載することになりました。むかわ町穂別の中でも、苫小牧信金の店舗は一つだけ。地元の人でも車で15分くらいかかるという人もいるので、なかなか気軽に行けないという声もありました。

そうした状況を改善したい私たちと、より組合員さんにとって便利になればというコープさっぽろさんの想いが一致し、この取り組みにつながりました。北海道内では初めての事例になります。
ATMを利用したことのなかった組合員さんもいらっしゃったので、最初は半信半疑という印象もありました。それでも仕組みを理解してもらえると、「あらーすごいねー!」とうれしい反応が。このカケルのATMでは通帳記帳までできるので、コンビニ等で引き出しまではできていたけど、という方にも喜んでいただけています。
通称「山日高」と呼ばれている、日高町の内陸部のエリアでは特に顕著。2020年3月に苫小牧信金の店舗が閉鎖してしまったこともあり、カケルのATM利用に行列ができることもあります。北海道内で同じような状況はたくさんあるので、この取り組みを始めた当初は各地から反響がありました。

お金の管理や機械の立ち上げなどの対応のため、ATM搭載車の稼働エリアには、馬場さんも常に同行されているそう。組合員さんが親しみを込めて「先生」と呼んでいたのが印象的でした。

組合員さんの声

一方カケルを利用されている組合員さんは、どう思っているのでしょう?何名かにご協力いただき、お話を聞いてみました。みなさんカケルってどうですか…?

家の近くまで回ってくれるので、本当に助かっています。電話で連絡しておくと欲しい商品も持ってきてくれるのでありがたい。最近トラックが新しくなって、使いやすくなりました。中が明るくなって商品もよく見えます。ATMも付いたので、お金を下ろしてそのまま使えるのが便利です。

足が悪いので助かります。前に頼んでおいた小豆が買えてうれしい。赤飯に入れたりして使うつもりです。ふだん魚はあまり食べないけど、おすすめされたのがおいしそうだったから買ってみました。

たくさん種類があって、選ぶのも楽しいです。私の好きなアメが置いてあって、主人が好きなものとそれぞれ選んで買っています。今日は法要があるので、はじめてお寿司を買いました。ちょうどよくカケルが来てくれてよかったです。

普段は別の配送サービスで食品を頼んでいて、そこで足りないものをカケルで買っています。車が運転できないので、ATMは今まで市外まで歩いて行ってました。最近はカケルでの買い物ついでにATMも利用しています。

みなさんの姿を見ながら感じたのは、本当にこのカケルでのお買い物や、ここに集まる人との会話を楽しみにされているのだということ。ドライバーさんが、買い物を悩んでいる組合員さんに「これ食べてみる?」とご提案したり、「いつもの“アレ”持ってきたよ」と商品をお渡ししたり。
組合員さん同士でも、袋いっぱいに購入した方に対して「代わりに運んであげるよ」と手伝ってくれる人がいたり。カケルを中心としたやさしい時間が流れているなと感じました。

最後に、こうしたやりとりを支えているドライバーさんにもお話をうかがいました!

ドライバー 越渕さんのお話

コープさっぽろ パセオむかわ店
おまかせ便カケル担当
越渕智恵子さん


この仕事を始めて、5年半くらいになります。最初は商品・組合員さん・場所など、覚えることがたくさんあって思った以上に大変でした。それでも少しずつ皆さんの好みやいつも買うものを覚えて、用意していくとすごく喜んでもらえました。今では「私のアレ」と言われたら理解できるくらいです(笑)
朝に商品を準備するときも、組合員さんたちの顔が浮かびます。牛乳一つとっても、あの人はこれ、この人はあっち…と別の種類を用意したり。お年寄りはどうしても、慣れている同じ商品を買いがち。そのため新しい商品を勧めたりしながら、食事が偏らないようにとか、食べることが楽しくなるようにと考えています。悪天候とか大変なこともありますけど、「よく来たね」と言ってもらえるだけで、やっててよかったなと思えますね。
これからも段々と、地域にお年寄りは増えていくはず。皆さんからは「75歳までは若いんだから続けて」と言われています(笑)。そこまでできるかわかりませんが、頑張りたいですね。

メモには組合員さんの好みやほしい商品がビッシリ!

メモしなくてすむように、欲しい商品の袋を持ってきてくれる人もいるそう。

インタビューを終えた後、私たちを追いかけて越渕さんがあるものを見せてくれました。手にしていたのは、組合員さんが自作した絵のプレゼント。
「絵を書いて渡してくれたり、手作りのお弁当を作ってくれたり、そういうのが一番嬉しいかもしれないです」と語る越渕さん。そこには、商品を売る人と買う人というだけではない、豊かなつながりがあるように思えました。

おまかせ便が運ぶもの

コープさっぽろには「トドック」という宅配のサービスもあります。なのにどうして、移動販売の「カケル」が必要なのだろう?私たちは取材前に、そんなことを考えていました。

目の前まで、商品を積んだトラックがやってくる。カケルにあるのは、その「便利さ」だけではないのかも知れません。ご近所さんとする何気ない会話。商品を選ぶ楽しさ。食を楽しむこと。そういった時間を通して、毎日の生きがいを増やしている。大げさかもしれませんが、カケルに集まる人たちと越渕さん・馬場さんとのやり取りを見ていたら、そんなものまで運んでいるように感じてなりませんでした。

やさしい笑顔で見送っていただいた越渕さん。

みなさんの姿を見て、あたたかい気持ちで帰路についた編集部一同。カケルの存在はもしかすると、今の社会が進んでいる便利さとは逆行しているサービスなのかもしれません。でもこの先の未来にも、ずっと続いてほしい!と心から思いました。

あなたのもとにも、そのうちカケルがやってくるかも知れません。明るい音楽とアナウンスが聞こえたら、ぜひ利用してみてくださいね。現在の運行エリアや時間は、こちらからご覧いただけますよ。

コープの移動販売
https://www.sapporo.coop/content/?id=27

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