みなさん最近、旅行してますか?
年末も近づいて、計画を立て始めたという人も多いのではないでしょうか。北海道も日に日に寒さが増して、暖かいところに行きた――――いっ!!なんて思ったりしてしまいますよね。今回はそんな、「旅行」にまつわるお話です。
2023年10月、仁木町にあるワイナリーを中心に旅する体験ツアーが開催されました。
実はこのツアーは、コープさっぽろの関連会社である「コープトラベル」と、「札幌国際大学」の学生が協力して企画したもの。いったいどのような経緯でこの取り組みが行われたのでしょうか?
お話をうかがうと、そのきっかけにあったのは「人手不足」というキーワードでした。
きっかけは2つの「人手不足」
生産者さんの人手不足
コープトラベルでは2022年から、「ぶどう畑でレストラン」というイベントを行っています。これは生産者さんの畑でコース料理を味わう「畑でレストラン」の特別版。
ワイナリーのぶどう畑を目の前に、生産者さんやシェフの想いを聞きながら、料理とワインのマリアージュを楽しむというものです。北海道の食の豊かさを感じられるイベントの中で、コープトラベルはある話を耳にしました。
それは生産者さんがお話ししていた、「収穫などの最盛期に、どうしても人手が不足してしまう」という悩み。短い期間にたくさんの収穫をしなければならないため、スタッフの方の力だけでは、どうしても手が回らなくなってしまうのです。限られた農家さんだけではなく、多くの場所で深刻な課題となっているそう。
こうした人手不足の話を受けて、なにか協力できることはないだろうか?と考えたことから、この取り組みはスタートしました。
▼ぶどう畑でレストランについてはこちら
https://winetour.delicious-hokkaido.jp/vinyard-restaurant/
観光業界の人手不足
※帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2022年10月)」を基に日本総研作成。https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/13866.pdf
生産者さんと同じように、深刻な人手不足に直面している業種がもう一つ。それが「観光業界」です。
旅行会社や宿泊施設、飲食店に運輸サービス(飛行機・バス等)など、いろいろな職業が当てはまりますが、いまその担い手が不足しています。
上記の表は企業に対して「人手不足を感じているか」とアンケート集計したものですが、「旅館・ホテル」「飲食店」は全体の中でも特に深刻な状況にあることが分かりますよね。
これはコロナ禍で離職する人が増えたり、新しく就職する人が減ってしまったことが背景にあるそう。たしかに長い期間旅行が制限されていたことを考えると、その影響の大きさが想像できます。
少しずつ旅行の需要が増えている今でも離れてしまった人材が戻らず、「お客さまを受け入れることができない」という問題が起きてしまっているのです。
札幌国際大学とコープトラベルが協力
そこでコープトラベルは、北海道で唯一の観光学部がある「札幌国際大学」に相談することにしました。これからの観光を担う学生たちと一緒に「生産者さんのためのツアー」を企画することで、2つの人手不足の貢献につながるのではと考えたのです。
まず行ったのは、学生が実際に現地体験をすること! 2023年5月に札幌国際大学の学生たちは、仁木町にあるNIKI Hills Wineryでフィールドワークを行いました。
自らぶどうの苗を植え、ワインをつくる施設を見学。その体験をもとに、新しいツアーのプランを考えます。
どうすれば人手不足の問題を楽しく知ってもらえるか?どんな内容だとお客さんが集まるだろうか?頭を悩ませながら、みんなでプランを作成しました。そうしてコープトラベルの職員たちの力も借りながら、ついにツアーが完成!2023年10月に実施することになったのです。
「ぶどう収穫ボランティアツアー」に同行しました!
実施されたツアーのタイトルは「家族で楽しむ★ぶどう収穫ボランティアツアー」。学生たちが考えたのは、参加する人たちに収穫を手伝ってもらおう!というツアーでした。小さなお子さんとそのご家族を対象に、楽しみながらワインの生産や観光の仕事に興味を持ってもらいたいというもの。
札幌からバスでまわるツアーで、当日のアテンドにも国際大の学生たちが参加します。行程は次のとおりです。
ツアーの行程はこちらのとおり。
しかし開催前に、あるアクシデントが…!当日の天気はなんと雨予報になってしまったのです。ぶどうの収穫は畑で行うものなので、せっかく企画した内容を変更しなければなりません。
それでも楽しみにしてくれていた子どもたちを、なんとか楽しませたい!そんなことを考えながら、コープトラベルと学生たちは、当日までプランの調整を行いました。
ホテルのロビーでお出迎え
ツアーの集合は、札幌市内のホテルから。ツアースタッフは一足先に集合し、お客さまの到着を待ちます。天候のこともあり、学生たちは緊張の様子。
それでも続々と到着されるお客さまのお名前を一人ひとり確認しながら、受付をしていきます。みなさんが揃ったところで、バスはいざ仁木町へと向かいます!
移動中も学生たちがアナウンス
バス車中でのアナウンスも、札幌国際大学の学生たちが担当。「拙いところもあるかも知れませんが、一日よろしくお願いします」という挨拶に、参加者からはあたたかい拍手が。和やかな雰囲気の中でツアーは始まっていきました。
今回は親子で参加のツアーとあって、主役は子どもたち。道中にも楽しんでもらえるようにと、学生たちが考えたクイズやゲーム大会を行いながら目的地へと向かいます。
景品でお菓子がもらえるとあって、子どもたちも大盛り上がり。約1時間の道中でしたが、あっという間に感じられました。
NIKI Hills Wineryを見学
最初にやってきたのは「NIKI Hills Winery」。ワイン畑に醸造施設、レストランやホテルがあり、ワインのテイスティングなどもできる複合施設です。
こちらのぶどう畑で収穫体験を行う予定だったのですが、あいにくの天候により中止することとなりました。その代わりに参加されたみなさんには、醸造施設の見学を楽しんでもらうことに。こうした見学ツアー入ることのできない場所なので、これも貴重な体験です。
ワインをつくる行程や、機械の説明を聞きながら、大人たちもなるほどという表情に。中には熱心にメモをとるお子さんの姿も!将来はワイン農家になるのかな!?というほど興味を持ってもらえて、うれしい限りです。
ぶどうを使ったサシェづくり
NIKI Hills Wineryの選果場へと会場を移して、続いて行ったのは「アロマワックスサシェ」をつくる体験。一般的な「サシェ」は袋の中にハーブなどを入れた香り袋のことですが、アロマワックスサシェはキャンドルの元となるワックスを固めて作ります。
まず型の中にブドウの絞りかすや枝を並べ、好きなデザインをつくることに。手元を見ると、可愛らしい顔やぶどうなど、できあがる個性豊かな作品たち。みなさんお上手!
こちらが完成イメージ
ぶどうでつくる顔がかわいい!
デザインができあがったら、型に温めたワックスキャンドルを流し込みます。ワックスキャンドルにはアロマを混ぜることで、香りも楽しむことができるようになっています。しっかり型に入れられたら、固まるまでしばし待ちます!
お待ちかねのランチタイム
サシェの完成を待つ間に、お待ちかねのランチタイム!
江別のファームレストラン「風の村 食祭」でつくられた特性のお弁当と、NIKI Hills Wineryのワインを楽しめます。
ワインはNIKI Hills Wineryを代表する「HATSUYUKI」と「NEIRO」という2つの銘柄を用意。両方とも白ワインなのですが、味わいの個性が異なり、みなさん飲み比べを楽しんでいました。
もちろんお子さまは、ワインでなくぶどうジュースで乾杯!お弁当はチーズ、ハムなどワインとの相性ぴったりなラインナップになっていました。
ゆっくりとランチを味わっている間に、先ほどのサシェができあがりました!型から出して紐をつけたら、部屋に飾れる素敵な作品に。完成したサシェを手に、また次の目的地へと向かいます。
小樽でバスガイド体験
バスに揺られること1時間弱。続いてやってきたのは小樽です。ここで子どもたちにやってもらったのは、「バスガイド」の体験!
運河や資料館などの観光スポットの前にバスを止め、一人ひとりその場所についての案内をしてもらいます。緊張している様子も見られましたが、アナウンスを始めるとみんな笑顔に。ベレー帽とベストでバスガイドになりきって、楽しくトライしてくれました!
商店街でとんぼ玉づくり
そして小樽堺町通り商店街では、最後の体験を。小樽を代表するガラス細工「とんぼ玉」をつくります。
材料となるガラスの棒を温めて溶かし、丸く形を整えることでできあがるのですが、大人も思わず熱中してしまう作業。子どもたちはスタッフの方の手も借りながら、上手に完成させていきます。
ガラスの色や飾り付けを選ぶことができるので、思い出に残るオリジナルの作品ができあがりました!
札幌に到着
全ての体験を終えて、バスは札幌へ。無事に到着したところで、このツアーは終了となります。
最後はコープトラベルと札幌国際大学のみんなでお客さま一人ひとりをお見送り。
雨天による行程の変更もありましたが、参加した子どもたちからは「楽しかった!」の声が。喜んでいただけたようで、なによりです。ここまで大人に混ざって頑張った国際大学の学生たちにも、ほっと安心の表情が見えました。
NIKI Hills Wineryでのワークショップから始まった取り組みも、これで一段落。無事にツアーを終えた学生たちに、最後にインタビューをしてみました。今日一日を終えて、どうでしたか?
参加した学生たちにインタビュー
あいにくの天気で、これがやりたい!と考えて計画したものができなくなってしまいましたが、コープトラベルのみなさんにフォローいただいて、お客さんの喜んでいる姿を無事に見ることができてうれしかったです。ありがとうございます。
初めてこうしてツアーに添乗させていただきましたが、今後につながるとても良い経験になりました。
自分たちでツアーを企画して、実際に参加してとこれまでにない経験ができました。ツアーについては反省も多く、自分がいちばん楽しみ過ぎてしまったように思います。
今度はもっとまわりに気を配って、お客さんを楽しませられるようになりたいです。
天気の影響もあって、今日までとても不安な日々でした。それでもできることをとコープトラベルさんと考えたツアーを、みなさんが楽しんでくれてよかったです。今日は安心して眠れそうです。
行程の変更やお店の調整なども含めて、現場じゃないとできない体験をすることができました。自分は修学旅行で出会ったガイドさんに憧れて、観光業界の仕事を目指しているのですが、今後のためにとても参考になりました。
今回同行したのは3年生が中心で、自分はまだ2年生。すごく実力不足を感じました。3年・4年生とこれから学年が上がっていきますが、もっといい企画をしたい、楽しんでもらいたいという思いが強くなりました。次回もチャンスがあればお子さんだけでなく、いろんな世代に楽しんでもらえるツアーを考えたいです。
札幌国際大学 田中教授へインタビュー
続いて学生さんたちを影で支えた、札幌国際大学 田中教授にもお話を聞きました。
私たちが関わる観光の業界と、ワイナリーさんの人手不足の問題から今回の取り組みは始まりました。春先にぶどうの苗植えを行ったところからでしたが、学生のことをコープトラベルさんが粘り強く指導してくださって、ツアーとして形になりました。
農家さんの困りごとを解決しようというのが本筋ではあったのですが、学生たちのアイデアでバスガイドの体験もやらせてもらいました。こういう小さなきっかけから、観光業に興味を持ってくれる人が増えたらうれしいなと思います。
この企画以外にも、コープトラベルさんにはインターンシップの受け入れもしてもらっています。学生たちが実践的な経験を積む上で、これ以上ないサポートをしてもらえているので、本当にありがたいです。
コープトラベル 白川社長へインタビュー
最後に、ツアー実施の中心となったコープトラベルの白川社長へのインタビューです。コープトラベルにとってはどのような経験となったのでしょうか?
今回のツアープランは、ほとんどが学生たちが出したアイデアでできあがっています。学生と一緒に取り組んだことで、私たちもとても刺激を受けました。「ワイナリーの収穫ボランティア」というテーマがあったとして、「じゃあファミリーに参加してもらおう」「それならバスガイドもやってもらおう」そういう柔軟な発想は私たちにはなかったものでした。
私たちなら「収穫=アクティブに動ける人たちを対象にしよう」と目的に対して強く意識を向けていたと思います。でも学生にとっての一番の軸は、「楽しいか楽しくないか」。大人の事情を考えてしまいがちな私にとっては、新鮮な感覚になりました。
実は親子で参加するツアーの中には、親御さんに負担がかかってしまうものもある。その点でお子さんを主役にするというのは、大人も安心して参加できるので、そういう意味でも良いツアーだったのではないかと思います。
今後も札幌国際大学さんと協力しながら、地域の課題解決につながる取り組みをしていきたいと考えています。
ツアーを終えて
コープトラベルと札幌国際大学のみんなで
参加するご家族に、様々な体験をしてもらおうと企画したツアー。天候の影響で思わぬ行程変更もありましたが、逆に学生たちにとっては、ガイドの仕事を知る良い機会になったようにも思います。
今回のツアーができあがったきっかけは、会社と学校、そして人と人のつながりから。こうしたつながりが増えていくと、北海道の観光ももっともっと元気になっていくのかもしれません。
私たちコープサイクル編集部も、こうしたバスツアーに参加するのは久しぶりの体験でしたが純粋にツアーを楽しむことができました!この経験がきっかけとなって、参加した学生さんたちはもちろん、子どもたちの中にも、観光に携わる人が出てきたらいいなと思います。
みなさんもこれから旅に出ることがあったら、その裏で支えている人たちのことも、少しだけ考えてみてもらえたらうれしいです!
〈関連リンク〉
▼ぶどう畑でレストラン 公式ページ
https://winetour.delicious-hokkaido.jp/vinyard-restaurant/
▼コープさっぽろ「畑でレストラン2023」に北大農業サークルAgeesが潜入!
https://coopcycle.sapporo.coop/media/food/food_4144/
▼札幌国際大学〈仁木町ワイン畑のフィールドワークwithコープトラベル〉
https://www.siu.ac.jp/news/detail.html?news=738
北海道で生きることを誇りと喜びに
コープさっぽろの取り組みは、組合員さんのご利用や参加によって「北海道の暮らしを豊かにすること」につながっています。取り組みは組合員さんならどなたでも参加でき、日常を通して気軽に参加できるものもあります。コープサイクルでたくさんご紹介していきますので、ぜひその他の記事もご覧ください。