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コープさっぽろのPB商品「なるほど商品」について深堀りしていくインタビューの後編です。前回は商品開発部の高森部長にお話をうかがい、開発の裏側などについてお聞きしました。(「なるほど商品」ってなんですか?コープさっぽろのオリジナル商品について聞いてみた)今回はその中で出てきた「カーボンフットプリント」についての話を聞きに、室蘭工業大学にやってきた編集部一行。お話をうかがうのは永野教授と、コープさっぽろの鈴木さんです。教授に話を聞くなんて、ちょっと緊張です。。


永野宏治(ながの こうじ)教授

室蘭工業大学 システム理化学科
数理情報システムコース コース長
ーーー
東北大学大学院で博士号を取得後、1989年より室蘭工業大学に。環境科学や情報システムについての科目を担当している。


鈴木昭徳(すずき あきのり)さん

生活協同組合コープさっぽろ 組織本部
本部長補佐(SDGs推進担当)
ーーー
北海道大学大学院で博士号を取得後、植物の分子生物学者に。より地元に貢献できる仕事をと考え、2012年にコープさっぽろへ入協。コープさっぽろが行う社会貢献活動の推進を担う。

「カーボンフットプリント」ってなに?

商品に記載されている「カーボンフットプリント」の文字

―――単刀直入に聞きますが、「カーボンフットプリント」って一体なんなんですか?

【鈴木】いきなり難しい単語が出てきた!って思いますよね(笑)。でもそれで大丈夫です。まずみなさんに知っていただきたいのは、「コープさっぽろは環境に配慮した商品を作っているよ」ということ。みなさんが商品を手に取るときに選べる選択肢を増やせたらと思い、このような取り組みを行っています。

 

―――なるほど、まずはそういった商品があると知ってもらえたらということですね。それを聞いて安心しました…!ところでこの数字ってどんな意味があるんですか?

【永野】カーボンフットプリント(CFP)とかエコロジカル・フットプリント(エコフット)などの呼び方があるのですが、要するに「商品が生まれてから消費されるまでの、CO2排出量を数値化したもの」です。原料を作るとき、加工するとき、移動させるとき…それぞれを合算していったもので、コープさっぽろさんの商品ではその計算を室蘭工業大学で行っています。

―――それでは、数値の少ない商品がいいってことですか?

【鈴木】一概にそうとも言えません。食材によって高くなりやすいもの、低くなりやすいものなどもあり、たとえば乳製品は数値が高くなりがちです。しかし私たちは「乳製品は食べない方がいい」と言うつもりはありません。
ただ同じ食材で比較すると、海外からの輸入品より地元産の方が数値が低いな、と気付かされたりします。まずはこのような考え方や、カーボンフットプリントの存在を知ってもらえたらうれしいなと思っています。

―――なぜそのような意識を持つことが大切なのでしょうか?

【鈴木】2000年頃から世界全体で環境負荷に対しての意識が高まり、「CO2を減らそう」「低炭素」ということが言われるようになってきました。そこから現在は一歩進んで「脱炭素」の時代に。減らすだけでなく、CO2の排出を実質ゼロに近づけようという考え方に変わってきました。
その中で一つ一つの商品についても、作られるまでの過程や作られてからの運搬など、全体の環境負荷を把握しようという流れになっているのです。

どうして始めたの?

―――そういう背景があったんですね。ちなみにカーボンフットプリントの取り組みはどのように始まっていったのですか?

【永野】2008年頃にコープさっぽろさんから本学に対して、CO2削減の取り組みに力を貸して欲しいと依頼がありました。エコに配慮した店舗の開発などを行ったのですが、その次のステップがカーボンフットプリントでした。

【鈴木】生活協同組合は、世の中にある様々な課題を、事業を通して解決していく団体です。SDGsが流行っているからというわけではなく、その前から「将来こうあるべきだ」という姿に向かって組合員さんと事業活動を続けてきました。全道に店舗を持っているコープさっぽろは、特に食やエネルギーの面で果たすべき役割が大きいと思っています。そうした中で、提供する商品の情報をしっかりと開示することが大切だと考えました。

―――先生はもともとカーボンフットプリントの研究をされていたのですか?

【永野】いや、まったく(笑)。学生時代から現在に至るまで、専門は「超音波計測」。地熱エネルギーの研究のために、地面の下で起きていることを超音波を使って調べるというものです。
ですから最初に話をもらったときは、なんで私なのだろうと驚きましたよ。とはいえ社会に直接関係することをやってみたいという意欲はあったので、引き受けることにしました。なにも分からないところからのスタートでしたが、コープさっぽろさんと二人三脚でやり方を見つけていったという感じです。

どうやって計算している?

研究室の前に飾られている商品のパッケージ

―――数字はどのように計算されているのでしょうか?

【鈴木】カーボンフットプリントは原料の製造から消費までの、CO2排出量を算出したものです。つまり原料を作るのにどれだけCO2が発生するか、その輸送過程ではどうか、原料から製品にするときは…とそれぞれの段階を調べて、足し算していくことになります。
メーカーさんに必要となる情報を記入いただいて、我々はそれを計算するシステムに入力し、算出した数値をコープさっぽろさんにお伝えしています。このように計算しましょう、という指針を国の方でも示しているのですが、実は私たちは独自のやり方で計算しています。

―――厳密な計算とは違うということですか?

【永野】コープさっぽろのカーボンフットプリントは、店舗に商品が並んだ以降のことを計算から外しています。厳密にはどのように消費されるか、というところまで必要なのですが、食に関してその計算は難しい。どのように調理するかでも、数値が変わってしまいますからね。
なのでそこは思い切って削除しようと考えました。そのことをマンチェスター大学でライフサイクルアセスメントについて研究している先生にお伝えしたら、いたく感動してもらえましたね。本質がずれていなければ、より継続して実践できる方がいいということなのかも知れません。

―――数値の計算にはどれくらい時間がかかるのですか?

【鈴木】始めのうちは何日もかかっていました。産地がここだから移動距離はこれくらいで、メーカーさんは製造にどれだけのエネルギーを使っていて…と一つ一つ手作業で計算が必要だったからです。現在では学生さんの協力もあって、永野先生はこの数値を計算できるシステムを作ってくれました。情報を入力すれば自動で計算ができるようになったので、大幅に効率化されています。今だと情報をお渡しした翌日には、数値を出してもらえるようになっています。

続けてみて感じたことは?

―――取り組みを続ける中で、どのような変化がありましたか?

【鈴木】メーカーさんと話していると、意識の高まりを感じますね。原料調達から自社に至るまでをきちんと把握しているし、できればその数字を下げていこうという考えが広がっているように思います。
おそらくこういう取り組みを続けていると、コスト的にはいいけど環境負荷で考えるとマイナスだなと気がつくこともあるのかも知れません。例えば北海道でとれた海産物を海外で加工し、再び北海道に戻して販売する商品。コストなどの理由でそうしているのだと思いますが、加工まで北海道でできるようになれば、カーボンフットプリントの数値は下がりますよね。

―――ご自身の中でも変化はありましたか?

【永野】私は商品の表示をよく読むようになりましたね。週に一度くらいコープさっぽろに行くのですが、奥さんが商品を探している間に「こんなのが原材料に入ってるんだな」と眺めたり。解析をする中でも知識が増えるので、選ぶ商品や生活スタイルは変わりましたよ。
なるべく地産地消のものを買うようにしたり、コープさっぽろで野菜を選ぶときは「ご近所やさい」の方を選ぶようにしたり。値段以外のところも、ちゃんと考えて買わないとと思うようになりましたね。

地元生産者の商品が並ぶ「ご近所やさい」のコーナー

取り組みの今後について

―――今後の取り組みについては、どのように考えられていますか?

【永野】学内の先生から「コープに見に行ったけど、永野が研究したのはどこにあるんだ?」と言われたことがあります。2万点3万点と商品がある中で、僕が計算したのは累計でも1000点くらい。知っている人なら見つけられても、知らない人には難しいかも知れません。
より目に届くように、組合員さんにも知ってもらえるようになればいいなと考えてはいますね。

【鈴木】今の大学生と話をすると、「サスティナブル思考」が当たり前に備わっているなと感じます。現役世代と呼ばれる人たちより、これからを担う将来世代の方が、こういった数字を敏感に気にしてくれるかもと思っています。ある日突然この取り組みを始めようと思ってもできませんから、その中でコープさっぽろが先行して取り組んでいることには意義があるはず。室蘭工業大学さんの協力がなければできないものですから、この連携自体もずっと続けていきたいですね。

研究室の前には取り組みについての資料が

商品の端に書いてある数字に、そんな意味があったんですね…!些細な疑問からお話を聞くことになりましたが、社会の現状やコープさっぽろさんの考え方を知ることになり驚きました。
商品を手に取るときに、環境への影響を意識する人の割合は、まだまだ少ないと思います。けれどいつかその考え方が当たり前になるかも知れませんし、そのためにまずコープさっぽろが取り組みを行っているという事実に、「なるほど…」と深く納得しました。

インタビューの中で鈴木さんは、「組合員さんの意識が変われば、それが北海道へ、日本全体へと広がっていくと思う。みなさんの意識を変えていくために、コープさっぽろが旗振り役になりたい」ともお話されていました。そんな熱い思いが、この「なるほど商品」「カーボンフットプリント」には詰まっているようにも思います。
コープさっぽろのお店に行ったときは、ぜひ手に取って、表示をマジマジ見てみてください!あなたの行動から、世界が変わる…かも?

前編の記事もぜひご覧ください。
▼「なるほど商品」ってなんですか?コープさっぽろのオリジナル商品について聞いてみた(前編)
https://coopcycle.sapporo.coop/media/food/food_1831/

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